”長州ファイブ”に学ぶ国際社会での立ち振る舞い
11月22日に日経DUALで紹介されていた野田智義氏の記事を抜粋しました。
自分は何をなすべきか、アイデンティティーの自覚が重要
長州ファイブ(Choshu Five、長州五傑)とは幕末期に藩命を受けて英国留学し、のちに技術官僚として日本の近代化を支えた5人の長州藩士を指します。初代首相となった伊藤博文や外相となった井上馨など、いずれも日本史に名を残す偉人たちですが、当時は鎖国状態から開国したばかりで彼らは英語などろくに話せませんでした。ちょんまげを切ったばかりで洋装にも不慣れ。立ち振る舞いも江戸時代の風情そのままですから、その姿は当時の英国人にとって滑稽に見えたかもしれません。
しかし実際には、彼らは当時の英国社会において大変な尊敬を集めました。5人が学んだロンドン大学には「近代日本の基礎を築いた先駆者をたたえる」と記した彼らの石碑が今も残っています。おそらく彼らは、自分が何者で何のために生き、これからの世界において何をなすべき人間なのか、というアイデンティティーを明確に自覚していたからだと私は考えています。そして、片言の英語でもそれをきちんと伝えることができた。これができる人間は、たとえ語学が堪能でなくても、グローバルな経験が乏しくても、心から尊敬されます。もちろん語学はできるに越したことはありませんが、リーダーシップにおいては必須ではありません。
野田智義氏 2018年8月、東京・日本橋でスタートした異色の大学院大学・至善館理事長。仏インシアード経営大学院や英ロンドン大学経営大学院など世界的なビジネススクールで教鞭(きょうべん)を取ってきた。